美容室や理容室、美容サロンを開業するには物件や設備の手配、資金の調達、保健所への申請などさまざまな準備が必要です。
資金の調達においては、美容室の開業を後押しする補助金や助成金を活用することも可能です。
本記事では独立を考えている方やオーナーとして美容室の経営を考えている方向けに、失敗しないためのポイントや、美容室の開業にかかる費用相場や活用できる補助金制度など詳しくご紹介していきます。
美容室の開業で失敗しないための3つの重要なポイント
美容室は競争が激しい業界であり、綿密な資金計画と戦略なしには成功が難しいのが現状です。
統計によれば、新規開業した美容室の約半数が5年以内に閉店を余儀なくされるというデータがあります。
ここでは美容室の開業で失敗しないための重要なポイントについて解説していきます。
1.無理のない資金計画を立てる
美容室の開業には、物件取得費や内装工事費・店内設備などの設備資金と、サロン開業後に軌道に乗るまでの期間に必要な運転資金が必要になります。
お店が軌道に乗るまでの期間は開業から半年程度かかると言われています。
運転資金としてその間の家賃や光熱費などの固定費を賄える費用を準備しておきましょう。
お店の立地や規模によりますが、運転資金は最低でも150万円ほどは準備する必要があります。
資金計画を立てる際は融資や補助金・助成金の活用も積極的に検討しましょう。
また予想外の出費にも対応できるよう、余裕を持った予算設定が重要です。
2.物件選びのポイント
美容室の開業にあたり物件選びは非常に重要なポイントです。
お店のコンセプトやどのような客層をターゲットにするかで、店舗を構えるエリアが変わってきます。
物件を選ぶ際はどのような客層が利用するエリアなのか、実際に現地に赴き周辺環境のリサーチ行うとよいでしょう。
また賃料や敷金・礼金などの初期費用、リフォームはどの程度必要となるのかを把握し、総コストが事業計画に見合っているかの見極めも必要です。
あわせて必要なスペースが確保できる広さや間取りかも物件選びでは重要です。
内覧前に作業導線やお客様の導線を考えたレイアウトを検討しておくことをおすすめします。
3.ITツールの活用を検討する
美容室の運営には予約管理システムやキャッシュレス決済などのITツールが欠かせません。
オンライン予約システムを導入することで、24時間いつでも予約を受け付けることができ、顧客の利便性が大幅に向上します。
またキャッシュレス決済のニーズは非常に高まっており、顧客が美容サロンを選ぶ重要なポイントの一つと言えます。
このようなITツールを効果的に活用することで、業務の効率化、顧客サービスの向上、マーケティング力の強化が図れます。
ただし、導入にあたっては初期費用や運用コストも考慮する必要がありますので、ITツールの導入をサポートする補助金の活用も検討してみましょう。
美容室の開業にかかる費用相場
テナント(貸店舗)を借りて美容室を開業する場合、一般的に1,000万円~2,000万円程度の資金が必要と言われています。
マンツーマンサロン(一人美容室)の場合は1,000円前後、スタイリストを雇う場合は1,500万円前後が相場となっています。
費用の内訳では、内装・外装工事費と賃料などの物件に関する費用が最も大きな割合を占めます。
他にも美容機器・シャンプー台・スタイリングチェアなどの設備費、シャンプーやカラー剤などの備品費用が必要となります。
更に150万円~200万円程度の運転資金を準備するようにしましょう。
美容室の開業にかかる費用の内訳
ここまでは美容室を開業する際にかかる費用の相場をご説明しました。
ではどのような項目に、どのくらいの費用がかかるののか具体的にみていきましょう。
物件取得費
物件取得費は、テナントを借りて美容室を開業する場合に必要な費用です。
賃料は物件の広さ、立地などの条件により変動はありますが、一般的な相場は10万円~30万円程度です。
テナントを借りる際は、前家賃(1~2ヶ月分)や敷金・礼金・保証金(3~6ヶ月分)、仲介手数料(1ヶ月分)などの費用がかかりますので、20万円の物件を借りる場合には、最低でも150万円ほどの費用が必要となります。
ただし人気の物件は敷金なども高い傾向にありますので、物件取得にいくら準備できるか事前に決めた上で物件を探すようにしましょう。
内装・外装工事費
物件が決まれば、次は内装工事を行います。
美容室の内装工事の相場は坪単価20~60万円程度ですが、居抜き物件などで既存の配管がある場合を除き電気・ガス・水道関連の工事は必須となり、狭い美容室ほど内装工事の坪単価は高くなる傾向があります。
例えば15坪のテナントで開業し、1坪あたり40万円の内装費がかかった場合の内装工事費は600万円となります。
それ以外にも数十万~100万円ほどの外装工事費用や看板作成費用も必要となり、一般的に内装・外装工事費は開業資金の40~50%程度の割合を占めます。
事前にレイアウトのイメージをしておくことは大切ですが、物件の形状によっては希望通りの配置ができるとは限りません。
店舗のレイアウトはお客様とスタッフの導線に直結する大切なポイントです。
お店のコンセプトはあらかじめ決めておき、細かな店舗のデザインは経験豊富なプロに設計を依頼することをおすすめします。
美容機器等の設備費
美容サロンの運営には、スタイリングチェアやシャンプー台(シャンプーユニット)、ドライヤーなどの機器や機材は欠かせません。
これらの設備は新品の購入や中古の購入以外にリースも可能です。
他にも洗濯機や衣類乾燥機を導入すると、クリーニングに出すランニングコストや、タオルのストックも少ない枚数に抑えられます。
また予約管理を行うパソコンやタブレット、キャッシュレス決済端末、電話、インターネット設備など、店舗の運営に欠かせない機器も必要になります。
特に電話やインターネットの開通には工事が必要です。
オープンに間に合わないということがないよう、早めの準備を心がけましょう。
材料費
機器や機材以外にも、シャンプーやカラー材、クロスなどの消耗品も必要です。
運転資金
運転資金とは、利益に関わらず必ず毎月かかる事業を継続するために必要な費用をまかなう資金です。
お店が軌道に乗るまでにかかる期間は半年程度が目安となりますが、その間にも経費はかかります。
賃料・人件費・光熱費・通信費・広告宣伝費など、半年から1年分を目安に準備しておくとよいでしょう。
資金調達の方法は?
美容室を開業する場合、規模によりますが1,000万円~2,000万円の資金が必要です。
一人美容室の場合でも1,000円前後と決して安い費用とはいえません。
資金の調達方法には融資や補助金・助成金の活用などがあります。
融資
店舗を開業する際にもっとも利用されるのは日本政策金融公庫などの金融機関からの融資です。
融資は、事業計画書を提出し審査を通過すれば、比較的低金利で必要な資金を借りることができます。
しかし低金利で借りられる分、ビジネスローンなどよりも審査は厳しく、希望する額の融資を受けられるとは限りません。
申込者の返済能力や事業の将来性の審査があり、矛盾のない事業計画書を提出すること、自己資金の準備があること、申込者の信用情報に問題がないことなどが重要なポイントとなります。
ビジネスローン
ビジネスローンは融資よりも審査基準が緩く迅速に資金を調達できる場合が多いです。
ただしその分金利はは融資よりも高くなる傾向があり、慎重に返済計画を立てる必要があります。
リース
融資額が開業に必要な資金に満たない場合や、借り入れを抑えて開業したい場合は、機器などをリースするという選択肢もあります。
リースとは、リース会社に機械や設備などを購入してもらい、料金を支払い借りるという調達方法です。
リースで初期費用を抑えられればその分運転資金を増やすことも可能ですが、途中解約が可能かなど契約の条件はしっかり確認するようにしましょう。
自己資金
事業を始めるにあたり、借入だけでなく自己資金の準備も必要です。
自己資金の割合が高いほど金融機関からの信頼も得やすくなり、低金利での融資も受けやすくなります。
自己資金は開業資金の1/4程度が目安で、1,000円の開業資金が必要な場合、200~300万円程度の自己資金が必要になります。
補助金・助成金
美容室の開業には補助金や助成金が活用できます。
物件取得費、内装工事費、機材費など、補助対象経費は多岐にわたります。
補助金・助成金は融資と異なり返済の必要はありませんが、その分競争率は高く、申請可能な期間も限られています。
美容室に適した物件の種類は?
美容サロンを開業する際、どこで開業するかは重要です。
立地もそうですが、どのような物件で開業するかで開業に必要な費用やレイアウトの自由度も変わってきます。
ここからは、どのような選択肢があるのかご紹介していきます。
スケルトン物件を借りる
スケルトンのテナントを借りて開業する方法がもっとも一般的です。
立地や広さ・賃料など様々な条件から選択でき、レイアウトや内装の自由度も比較的高めですが、その分内装工事費は高くなる傾向があります。
居抜き物件を借りる
こちらもテナントを借りて開業する方法の一つですが、居抜き物件を選ぶことで、美容室の内装工事に必要な給排水設備、電気工事などの工事費用を抑えられます。
また工事期間も短縮できスピーディーに開業できることや、場合によっては機材も引き継げるというメリットもあります。
ただし希望するレイアウトにできなかったり、新たな機材を導入する場合は処分が必要であることなどのデメリットもありますので、開業にあたり何を重視するのかは事前に明確にしておく必要があります。
居住用マンションを借りる
居住用マンションは、一般的なテナントより賃料は安いですが、内装や設備工事の内容に制限があったり、工事ができない場合もあります。
また住居以外の利用が認められない場合もありますので、事前に必ず確認を行いましょう。
物件取得費用や改装費用・設備費用などは、国や自治体が実施する補助金・助成金を活用することで費用負担を抑えることが可能です。
ここからは美容室の開業時や開業後に活用しやすい補助金・助成金についてご紹介していきます。
美容室の開業時に活用しやすい補助金・助成金4選
補助金の多くはすでに事業を営んでいる方を対象に、業務効率化などのための費用を支援するものが大半です。
ここでは独立し美容室を開業する予定の方必見の制度をご紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、経済産業省が実施する補助金制度で、円滑な事業承継や事業引継ぎを促進し日本の経済活性化を図るものです。
事業承継やM&Aを通じて経営や事業を引き継ぐ予定の中小企業を対象に、物件取得費や美容機器等の設備費など最大800万円が補助されます。
この制度は、他の事業者からの事業継承以外にも、勤め先のサロンのオーナーから事業を引き継ぐ場合などにも活用できます。
またM&Aについてはマッチングサイトも多数存在しており、美容室開業の際の選択肢の一つといえます。
【東京都】開業助成金
開業助成金は、東京都内の商店街で美容室や理容室を開業する場合、店舗の家賃や改装工事費・美容機器や備品購入費などが最大844万円助成される制度です。
開業場所は商店街に限られますが助成額が非常に大きく、採択されれば借入を抑えて開業することが可能です。
また本助成金は、現在商店街で美容室・理容室を営む事業者から事業を引き継ぐ場合にも活用できます。
【東京都】創業助成金
創業助成金は東京都内で美容室などの開業を予定している方向けの助成金制度です。
こちらも店舗の家賃や器具備品購入費 、器具備品等のリース料やレンタル料が最大400万円まで助成されます。
リース料金も助成対象となりますので、機器や機材のリースを検討されている場合にも最大限活用できる制度といえるでしょう。
起業支援金
こちらの支援金は地方自治体が実施するもので、東京圏以外の道府県又は東京圏内の条件不利地域を対象に、地域の課題解決に貢献する事業を新たに始める方を対象に最大200万円の助成を行うものです。
地域の課題に応じた幅広い事業が対象となりますので、美容室などの開業が対象となるのか事前に確認を行いましょう。
他にも各都道府県の創業者向け補助金・給付金はこちらで確認いただけます。
美容室の開業後に活用しやすい補助金・助成金4選
すでに美容室を経営している方や2店舗目の開業を検討されている方には、様々な補助金や助成金制度があります。
IT導入補助金
IT導入補助金は中小企業・小規模事業者を対象に、業務効率化や生産性の向上を支援する制度で、POSレジや予約管理システムなどのITツールの導入にかかる費用の一部が最大450万円まで補助されます。
補助対象経費はソフトウェア購入費・クラウド利用料・ハードウェア購入費の他、セキュリティ対策ソフトの利用料などが挙げられます。
IT導入補助金2024には5つの申請枠がありますが、インボイス枠(インボイス対応類型)はPOSレジやキャッシュレス決済端末などの機器購入費が補助され、美容室で活用しやすい申請枠となっています。
IT導入補助金2024の公募締切日は2024年10月15日の予定です。
IT導入補助金2025の実施についてなどの最新情報は、公式サイトをこまめにチェックし確認しましょう。
IT導入補助金2024 事業スケジュールはこちら
IT導入補助金2024の公式サイトはこちら
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営のための販路開拓や生産性向上の取組を最大200万円まで支援する制度です。
従業員の数が5人以下の小規模事業者が、補助対象事業の遂行に必要な機器等の購入費用やリース料・レンタル料などが補助の対象となります。
他にも店舗改装やバリアフリー化工事、利用客向けトイレの改装工事、インターネット広告やSNSに係る経費なども対象となりますので、美容室を営む方が活用しやすい補助金のひとつです。
小規模事業者持続化補助金は2024年9月現在では申請可能な公募はありません。
今後も継続される可能性は十分ありますので、最新情報を確認するようにしましょう。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は厚生労働省が実施が実施する、非正規雇用スタッフの正社員化や処遇改善の取組を行った事業主に対して助成する制度です。
スタッフの雇用条件改善はモチベーションアップにつながり、結果サービスの向上や人材流出を防ぐことにもつながります。
常時雇用する労働者の数が100名以下の美容室で、パート従業員を正社員雇用した場合、1名あたり80万円が助成されます。
雇用形態を正社員にする以外でも、賃金の改定や、社会保険適用時の賃上げなど、賃金総額を増加させる取り組みを行った場合にも助成金が支給されます。
キャリアアップ助成金の公式サイトはこちら
キャリアアップ助成金のご案内(PDF)
両立支援等助成金
両立支援等助成金は、仕事と育児や介護などの両立が可能な環境作りのための取り組みを支援する制度です。
男性の育児休業取得や介護による離職の防止、円滑な育児休業の取得や職場復帰などに取り組む事業主に支援金が支給されます。
ワークライフバランスが重視される現代において、働きやすい環境かどうかは優秀な人材を確保する上で重要です。
受給した助成金は従業員の休業中の人員補充や、業務効率化を図れる仕組みの構築に使用するなど様々な用途に使用できます。
【まとめ】美容室の開業時に知っておきたいポイント
美容室や理容室・美容サロンなどを新規で開業する場合、規模によりますが1,000円~2,000円ほどの費用がかかります。
開業を検討している場合は、まず自己資金を貯めることから始めましょう。
それと平行して、融資やリースなど、どのような方法での資金調達方法がマッチするのかのリサーチを行うこともおすすめします。
競争が激化している美容室やヘアサロンなどの美容業界。
余裕を持った資金計画を立てること、綿密な経営計画を元に事業計画を策定することが美容室の開業を成功させる重要なポイントです。
また美容室は個人経営が圧倒的に多く後継者不足にも直面しています。
事業継承は買い手にとって初期費用を抑えられ、有能な人材や設備の確保、固定客の引き継ぎなどメリットも多数あり、開業の際の選択肢のひとつと言えます。
また返済の必要がない補助金や助成金は、資金調達のひとつとして非常に有効です。
ただし原則後払いとなり、特に補助金については採択されてはじめて支給されるものです。
助成金という名称の制度でも、補助金同様に受給のハードルが高いものもありますので事前に確認をおこないましょう。
補助金・助成金は、開業後に新たな設備を導入する際や改装を行う際にも活用できる制度です。
注意点や公募要領を理解した上で、資金調達の一つの手段として検討されることをおすすめします。
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