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記事の監修・執筆者:古川原
飲食店を開業する際、個人事業主で経営するのが良いか、法人として会社を設立していくのが良いのか、悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 結論から言えば開業は個人事業主で行い、経営が軌道に乗ってから法人化を検討するのがおすすめです。 この記事では個人事業主で開業することがおすすめの理由、法人化で得られるメリット、そして個人事業主から法人化する適切なタイミングについて解説していきます。
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まずは個人事業主スタートがおすすめ
一般的に飲食店を開業される場合、大半の方は個人事業主でスタートされます。
新しく事業をはじめて間もなくは、資金繰りに余裕がない場合が多く、税負担等が少ない個人事業主の方が事業を維持しやすいメリットがあります。
経営が軌道にのった数年後に法人を設立される、というパターンが比較的多く見受けられます。
個人事業主で開業するメリットをいくつかご紹介します。
事業の設立手続きが簡単にできる
個人事業主として飲食店を開業する場合は、法人に比べて設立手続きが簡単です。
法人の場合だと、登記の申請や役員の任命、資本金など、さまざまな手続きや準備が必要になるところを、個人事業主の設立手続きは税務署へ開業届を提出するだけで行えます。かなり簡略化されていますよね。
利益が少ないうちは税金の負担が軽い
一番のメリットと言えるのが税率の違いです。
個人事業主では所得税の税率が個人で適用されるため、利益が一定額以下の場合は法人より税率が低くなることがあります。
利益が少ない個人事業主は、税金の控除や減税制度を利用することで、税金の負担をさらに軽減できる場合もあります。
また、個人事業主で赤字の場合は所得税が発生しませんが、法人は赤字でも地方税が発生します。
金額は地域や規模によって異なりますが、法人であれば等しく払う義務のある税金が発生するデメリットを覚えておいてください。
経理作業がかんたん
個人事業主として開業する場合、法人に比べて経理作業が簡単です。
法人の場合、決算書や申告書、内訳書などの作成が必要になるため難易度が高く、基本的に税理士に依頼することになって依頼費用も発生してしまいます。
個人事業主の場合は、確定申告ソフトなどを使って自分で行うこともできますので、法人に比べると比較的に簡単かつ低コストで経理作業を行うことができます。
個人事業主で開業するデメリットは?
個人事業主で飲食店を開業するデメリットについてもご紹介します。
個人事業主の所得税は、所得が増えれば増えるほど税率も高くなる累進課税が適用されるため、利益次第では納税額が高額になる可能性があります。
課税される所得金額※ | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
※:1,000円未満の端数は切り捨て
参考:所得税の税率 | 国税庁
また、もしも事業が思うようにいかなかった場合に個人の財産にも影響が及ぶ可能性がある点や、社会的信用のある法人とは異なり資金調達に限りがある点などもデメリットとして挙げられます。
資金については個人事業主向けの補助金や助成金などを実施している自治体もあります。
事前にしっかりと準備と情報収集を行って制度を活用し、リスクを抑えた事業計画を立てることが重要です。
法人化するメリット
個人事業主のメリットをご紹介してきましたが、続いては個人事業主から法人化した場合に得られるメリットをご紹介します。
税率の上限を抑えられる
所得に応じて最大45%まで税率が上がる個人事業主と違って、資本金1億円以下の中小企業であれば最大23.20%に収まります。事業が軌道にのり、ある程度の所得を超えるようになったら、節税の面においては法人の方が有利になります。
参考:法人税の税率 | 国税庁
消費税の免税事業者に戻ることができる
年間1,000万円売上がある個人事業主の場合、2年後から課税事業者として消費時の納税義務が発生します。
しかし、法人化することで免税事業者に戻るため、納税義務を最長2年先延ばしにすることが出来ます。
社会的信用をアップさせる
お客様からするとオーナーが個人事業主か法人かというのは気にならないと思いますが、仕入先や融資元など企業間の取引においては法人の方が社会的信用を得やすいと言えるでしょう。
節税範囲が広がる
法人化すると、個人事業主に比べて経費に計上できる範囲が広くなります。
この中にはオーナー本人及び家族従業員への給与、生命保険料、社宅、出張費や休日出勤の手当などがあげられます。
たとえば居住物件を法人契約して法人が役員に住居を貸し出す形にすれば、社宅の家賃として経費に計上することができます(役員は一部家賃の負担が必要です)
法人化を検討するタイミングは?
飲食店の開業時は個人事業主で始めることをおすすめしていますが、それではいつ法人化するのが良いのでしょうか。
事業状況や目標によって法人化に最適なタイミングというのは異なるため、一概にこれがベストというものは言えませんが、一般的にタイミングの指針として挙げられるものをご紹介します。
消費税の課税事業者に切り替わる時
飲食店を開業後、年間の課税売上高(消費税がかかる売上)が1,000万円を超えると、2年後に課税事業者として消費税を納税する義務が発生します。これは個人事業主でも法人でも変わりません。
しかし、個人事業主から法人化した場合は売上がリセットされますので、課税事業者に切り替わるタイミングで法人化することで最長2年間は消費税の納税義務を免除することができます。
法人の税率の方が低くなる時
税率に注目して、個人事業主の所得税>法人税となる場合も検討タイミングのひとつです。
年間所得が900万円を超える場合、個人事業主の税率は33%、資本金1億円以下の法人は23.20%となります。
ただし、法人化すると法人住民税、顧問税理士への報酬、社会保険料など様々な手続きや費用負担が大きくなります。
税理士の無料相談や税額のシミュレーションなどもありますので、事業の現状や将来のビジョンを踏まえて慎重に検討してみてください。
まとめ
飲食店の開業は、設立の手続きが簡単でコストが低い個人事業主でスタートすることをおすすめします。
法人化すると節税や社会的信用など様々なメリットがありますが、費用負担も大きくなります。事業が軌道にのって売上を安定させてから、年間の所得とコスト面のメリット・デメリットを考慮して検討しましょう。
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記事の監修・執筆者
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株式会社ライフワン 古川原
保有資格:
・2級建築士/
・第2種電気工事士/
・一般建築物石綿含有建材調査者/
・石綿作業主任者店舗設計施工.com運営担当の古川原です。施主様、店舗デザイン・内装工事・建築工事会社様にも満足いただけるよう皆様をサポートさせていただきます。
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