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記事の監修・執筆者:古川原
店舗を開業するとき、必ず必要になるのが消防法への対応です。特に火を使うことの多い飲食店では、火災に対する備えは万全にしておく必要があります。
とはいえ法律というととっつきにくい印象もありますので、飲食店のオーナーが押さえておきたい主なポイントを簡潔にまとめました。
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消防法とは
消防法とは、火災を予防・警戒し、人命や財産を火災から保護することと、火災による被害を軽減すること、火災による傷病者の搬送を適切に行うことなどを目的とした法律です。1948年7月24日に公布されました。
消防法では、建築物など火災予防の主な対象となるものを「防火対象物」と定義し、用途や規模などに応じて消防用設備の設置や防炎物品の使用などを義務付けています。
防火対象物には飲食店のほか、劇場や映画館、キャバレー・ナイトクラブ、料理店、百貨店、旅館・ホテルなど、様々な業種の店舗が含まれます。
店舗への設置が義務付けられている消防設備
消防設備はほかにもありますが、ここでは飲食店に関わりの深いものを抜粋して紹介します。それぞれ設置基準が設けられていますので、階層と広さについての基準に着目してまとめていきます。
出典:消防法施行令(e-Govポータル)
- 1.消火器具(消防法施行令第10条)
- 2.屋内消火栓設備(消防法施行令第11条)
- 3.スプリンクラー設備(消防法施行令第12条)
- 4.自動火災報知設備(消防法施行令第21条)
- 5.ガス漏れ火災警報設備(消防法施行令第21条の2)
- 6.漏電火災警報器(消防法施行令第22条)
- 7.消防機関へ通報する火災報知設備(消防法施行令第23条)
- 8.非常警報器具又は非常警報設備(消防法施行令第24条)
- 9.避難器具(消防法施行令第25条)
- 10.誘導灯(消防法施行令第26条)
1.消火器具(消防法施行令第10条)
飲食店における消火器具の設置は、一般的な基準で延べ面積150平方メートル以上の店舗が対象ですが、火を使用する設備や器具を設けている場合はお店の規模に関わらず設置が義務付けられています。
「火を使用する設備又は器具」にはコンロや七輪、ピザ釜などが該当し、火を使わないIHコンロは対象外となります。
2.屋内消火栓設備(消防法施行令第11条)
屋内消火栓はテナントの場合、共用部分に設置されていることが多いです。
地上1~3階の飲食店なら延べ面積700平方メートル以上の店舗が対象ですが、地階や無窓階、4階以上の階にある場合は床面積150平方メートル以上が対象となります。
3.スプリンクラー設備(消防法施行令第12条)
初期消火に役立つスプリンクラーは、地上1~3階にある飲食店の場合、延べ面積6000平方メートル以上(平屋建以外)の大型店に設置が義務付けられています。
4~10階以下は床面積1500平方メートル以上、地階または無窓階は床面積1000平方メートル以上が対象ですが、地上11階以上の店舗はすべてに設置が義務付けられていますので、注意が必要です。
4.自動火災報知設備(消防法施行令第21条)
火災による熱や煙を感知すると、警報ベルなどで建物内の人に知らせてくれる自動火災報知器。飲食店では一般的な基準で延べ面積300平方メートル以上、地階または無窓階なら床面積100平方メートル以上の店舗が対象ですが、スプリンクラー設備と同じく11階以上の階にある店舗はすべて設置の義務があります。
5.ガス漏れ火災警報設備(消防法施行令第21条の2)
店舗が地階にあり、かつ延べ面積1000平方メートル以上、かつ飲食店用途である部分の床面積合計が500平方メートル以上の店舗が対象です。
6.漏電火災警報器(消防法施行令第22条)
漏電火災警報器は、壁や天井、床などをラスモルタル工法で仕上げた木造建築物を主な対象として、延べ面積300平方メートル以上、もしくは基準面積未満でも契約電流が50アンペアを超える場合に設置が義務付けられています。
ラスモルタルとはラス(金属製の網)を下地として、その上にモルタルを塗り付ける工法のこと。引込線の絶縁が悪く、ラスに漏電電流が流れた際に火災が発生する危険があるため設置が必要になります。
7.消防機関へ通報する火災報知設備(消防法施行令第23条)
電話回線を使用し、消防機関を呼び出したり通話したりすることができる設備です。火災の際にパニックになり住所等が正確に伝達できない等のトラブルを防ぐために設置が義務付けられました。
飲食店では延べ面積1000平方メートル以上が基準ですが、消防機関へ常時通報することができる電話を設置した場合は火災通報設備を設置しなくてもよいとされています。
8.非常警報器具又は非常警報設備(消防法施行令第24条)
非常ベル・サイレンは、ボタンを押すことで火災を知らせる設備です。比較的小規模な物件に設置されるもので、全体の収容人員(従業員も含む)が50人以上(地階または無窓階は20人以上)の店舗に設置義務があります。
非常放送設備は収容人員が300人以上、もしくは地上階数が11以上または地下階数3以上の大型施設などに設置されるもので、放送設備によって音声やサイレンなどを鳴らすことができます。
自動火災報知設備が設置されている場合は、非常警報設備の設置は免除されます。
9.避難器具(消防法施行令第25条)
避難器具は2階以上の階または地階で、階の収容人員が50人以上の場合に設置義務があります。また、2階以上の階のうち、該当階から避難階や地上に直通する階段が2つ以上設けられていない場合は、階の収容人員が10人以上で設置対象となります。
10.誘導灯(消防法施行令第26条)
基本的に誘導灯はすべての飲食店に設置が義務付けられていますが、例外として、避難が容易にできると認められれば免除される場合もあります。
飲食店開業時に消防法で義務付けられている届け出
飲食店を開業するときは、管轄の消防署に以下の4つの届出をする必要があります。
1.消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書
消防法で義務付けられている消防設備を設置したときに必要な届出です。もともと設置されていた設備を改修した場合にも届出の必要があるため注意が必要です。
2.防火対象物使用開始届出書
誰がどのような用途で建物を使用するかを消防署が把握するとともに、消防法で定められた消防設備がきちんと設置されているかどうかを確認するために行う手続きです。
建物の使用を開始する7日前までに管轄の消防署に届け出ます。
3.火を使用する設備等の設置届出書
火災の恐れのある「火を使う設備」を設置する場合、設置の7日前までに届出が必要です。
火を使う設備には、炉、温風暖房機、厨房設備、ボイラー、乾燥設備、給湯設備、ヒートポンプ冷暖房機、火花を生ずる設備、放電加工機、サウナ設備などが該当します。
4.防火管理者選任届出書
火災予防に関する様々な業務を行う防火管理者を選任する届出です。選任された人は消防計画を作成して管轄の消防署に提出しなければなりません。建物全体の収容人員が30人以上の店舗が対象となります。
防火管理者は資格が必要で、甲種(延べ面積300平方メートル以上の店舗)と乙種(延べ面積300平方メートル未満の店舗)の2種類の資格があります。甲種は2日間、乙種は1日講習を受ければ取得できますのでご安心ください。
なお、収容人員が300人以上の特定防火対象物において、防火管理者に選任されている人は、一定期間ごとに再講習を受講する必要があります。
防炎物品の使用について
不特定多数の人が出入りする飲食店では、消防法で定められた防炎性能基準を満たした「防炎物品」を使用することが義務付けられています。
防炎対象物品は大きく分けて「カーテン類」「じゅうたん類」「展示用合板」がありますが、飲食店の場合はカーテン、布製のブラインド、じゅうたんが該当しますので、覚えておきましょう。
まとめ
飲食店に設置義務のある消防設備の基準と、店舗開業時に消防署へ提出する届出についてざっと解説しました。
消防法のすべてを記載したわけではありませんので、細かい点については所轄の消防署へご相談ください。
法律に関することは内容が複雑で分かりづらいですが、お客様と従業員の命を守るために重要ですので、しっかりチェックしておきましょう。
また、設置した消防設備はいざというときに動かなくては意味がありませんので、半年に一度(総合点検は年に一度)の定期点検が義務付けられています。
消防設備点検については下記の記事でもご紹介していますので、合わせてご確認ください。
法令は今後改正される可能性がありますので、開業時には最新の情報をご確認いただきますようお願いします。
店舗設計施工.com
記事の監修・執筆者
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株式会社ライフワン 古川原
保有資格:
・2級建築士/
・第2種電気工事士/
・一般建築物石綿含有建材調査者/
・石綿作業主任者店舗設計施工.com運営担当の古川原です。施主様、店舗デザイン・内装工事・建築工事会社様にも満足いただけるよう皆様をサポートさせていただきます。
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